『J番記者による大忘年会2016』に参加してきた話

媒体を介さないゆえに伝えられる事がある。いわゆる「オフレコ」話はなんで面白いんだろう。悪い事を皆で共有するドキドキ感か、はたまた一人では抱えきれない秘事を他人に共有できる解放感か。「SNSで書かないで下さいよ」と言いながら楽しそうに話す姿が印象的だった。

ロフト9渋谷で開催された『J番記者による大忘年会2016』に参加してきた。その名の通り、Jリーグの番記者さん達が今年のJリーグを総括するトークイベント。参加者の大半が30代~50代男性という見るからにコアサポーターであろう方々ばかり。Jリーグを支えるサポーターの縮図がこのイベントにあった。ライトファンはトーク内容の半分も理解できないであろうマニアックさ。蛸壷化著しいJリーグに相応しいイベントだった。


イベントは満席

■色んな視点でJリーグを観る面白さ

オフレコは厳守するので書ける事は少ないながら一言でイベントを総括すると「知らない事ってまだまだあるんだな」。番記者だからこそ知りうる「クラブ人事」、「スポンサーやサポーターの影響力」、「ロッカールームや試合後記者会見での監督・コーチの発言」等々の裏話。 別に必要以上にリアルを知りたいとは思わない。ただ、多少のオフレコを知りうる事で今まで以上に行間を読めるようになる楽しみはある。

また、視点を変える事で見えるものもある。トークテーマの1つに「堂安律に翻弄された今季のJ3」という栃木の番記者から観たJ3総括があった。ガンバサポーターはさほど気にしないであろう他サポのガンバ大阪U-23に対する見方を知れるし、相手の想いを知る事でその試合が持つ意味が増えてより観戦を楽しめるようになる。


律の出場有無が栃木と大分の運命を分けた!?

そういう意味では同じコンセプトでサポーターをスピーカーとしたイベントがあっても面白くなりそう。番記者しか知らないオフレコ情報があるように、サポーターしか知らない事件簿や流行はクラブ毎に特徴が出そうな気がする。今回のイベントでもアシシ氏が「ジェフ運営炎上事件」を語り、蒼井ちあきさんがガンバファン感で「小川と一美がGO皆川を披露」してからピッチ上での連携が深まった話をするなど、マニアックさは避けられないながらも一般的にはあまり知られていない小ネタは山ほどある。MCはドメサカブログの中の人 、SPゲストは盟主。チケット代は1000円(1ドリンク制)でどうだ。


炎上やアンチについて語るアシシ氏


毎試合つけているサッカーノートを披露する蒼井ちあきさん


宇都宮さんはアンダーカテゴリにおける面白ネタを連発

とまあ、例の如く堅苦しい事も書いたが、イベント自体はゆるい空気で、多くの笑いがあるものなので、興味を持たれた方は気楽な気持ちで次回参加してみてはいかがでしょうか(「エアインタビュー」の話題時に若干ピリ付いた空気が流れたのはオフレコで)。

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コアサポーターはJリーグを楽しめないのか?

「マニアがコンテンツを潰す」という格言はどの業界でも使われているらしい。要はコンテンツへの貢献度の高い一部ファン(マニア)がライトファンに排他的な態度を取ったり、コンテンツ側がマニアばかりを気にしてライトファン向けのサービスを提供できなくなる事を指している。

ライトファンは眩しい。ここ数年、「最近サポーターになりました」という方々と出会う機会が多いが、初体験を重ねる日々は刺激的である事が傍からも伝わってくる。常々「歴史(過去)をファン・サポーターで共有する事がよりコンテンツを面白くする」とブログに綴る自分はマニアだ。過去の共有を求める事はライトファンからすれば排他的に映るかもしれない。

ガンバが弱い時代を知らなくてもガンバが勝てば嬉しい。2002年ワールドカップのバッドマンを知らなくても宮本恒靖はガンバのレジェンド。2008年の暴動を知らなくてもレッズサポーターはなんかムカつく。それでいい。なんの問題もない。知らない事を罪だと思う心が罪なのだ。



■経験が熱量を下げる?

ここから本題。

前述の通り、Jリーグは継続的に応援する事で紡がれる歴史を楽しめるコンテンツだと思う。ただ、一方で積み重ねてきたサポーターとしての「経験」が感度を下げる時がある。

例えば、ナビスコカップ決勝。2005年、国立競技場で仙石さんのスタメン紹介を聞いた時は興奮で体が震えた。2007年のナビスコカップ決勝ではスタメン紹介時点で感情が高まり泣いているサポーターが自分を含め相当数存在した。

今は違う。

「2005年の忘れものを取りに来たぜ!」は2007年ナビスコカップ決勝前煽りVTRのメッセージだが、ガンバ大阪にはもうどこにも忘れ物がない。リーグも、ルヴァンも、天皇杯も、ACLも・・・初体験が残されていない寂しさがある。経験を積み重ねる事はコンテンツを楽しむ上で必ずしも是ではない。


だからこそコアサポーターは「未経験」を求めてACLアウェイやJ3の地方遠征に旅立つ

歴史を知っているからこそ楽しめる事があるのは事実。一方で2回目の方が感動できたという経験がない事も事実。クラブ(スタジアム)から距離を置いて接するスタイルに変えた“元・コアサポーター”を多数知っているが、たまに自分もJリーグに対する熱量が落ちているのではないかと不安になる時がある。

そんな時、自分の熱量を回復させてくれる存在がライトファンである事は多々ある。純粋にJリーグを楽しむ姿を見ると、自分ももう一度新しいサイクルを楽しませてもらえる感覚になれる。つまり、コアサポーターこそ実はライトファンの存在に支えられているのではないかと思い始めている。だからこそ、ライトファンが更に楽しめる手助けをしたいと思うし、その連続がコンテンツを発展させるはずだ。

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超地域密着とグローバル展開 ~アミティエスポーツクラブを見学して~

アミティエ・スポーツクラブ」をご存知だろうか。関西を中心としたスポーツスクールである。関西を離れて10年近くなるので最近の評判は知らないのだが、関西ではそこそこ知名度があるクラブである。個人的には学生時代の就職活動で入社試験を受けた事があるという縁もある。他社の面接と日程が重なって途中で辞退したが、理念が素晴らしく好感度の高い会社という印象が残っている。

そして、これまた何の縁か現在のアミティエの社長が学生時代にスポーツビジネスについて色々教えて頂いた方であるという繋がりもあり、先日アミティエのサッカートップチームの試合を見学させてもらいに西京極陸上競技場にお邪魔してきた。


パワーアップした西京極の電光掲示板


スタグル「フジヤマプリン」


京都らしく「宇治抹茶」味を選択

アミティエトップチームは現在、関西リーグに所属している。選手はスクールのコーチでもあり、サポーターはスクール生である子供と保護者という実にアットホームなチームである。お弁当を食べながら観戦するゆるい空気感のスタンドで「◯◯コーチ頑張れー!」と子供の声援が飛ぶ光景はJリーグとは違った素晴らしい週末の在り方だった。


現在、関西サッカーリーグ2位でJFL昇格の可能性も


手作りでいい感じのスタメン紹介ボード


入場は無料

ただ、そのスクール活動を軸とした密着感は他者が新しく入りにくい空気感でもあり、蛸壺化となるリスクも抱えているとの事。Jリーグも一時期ゴール裏が排他的であるという批判があったが、コミュニティが強くなり過ぎるというのはどのコンテンツも共通の課題のよう。


試合後に行われる選手との写真撮影会

そんなローカル感溢れるクラブだが、ベトナムに支部がある国際的な一面も持っている。アジア戦略はJリーグだけの話ではないようだ。地域リーグクラブのアジア戦略におけるゴールは何なのかは今度じっくり聞いてみたい。


試合前に行われた熊本地震被害者への寄付金贈呈式。贈呈者が社長(左側)

個人的には上を目指さないローカルで蛸壺なクラブはあってもいいと考える。そういう小規模地域密着のクラブが増える方がJクラブが増えるよりも日本のスポーツ文化的にはメリットが大きいのではないか。Jリーグ昇格だけがゴールではない価値観は今後広がっていくはずだ。

そして、この先、アミティエはどこに向かうのだろうか。やはりアジア展開が気になる。ベトナムの次は検討しているのだろうか。スクールを軸としたスポーツを通じた超地域密着スタイルのアジア輸出?流行りのアジアへのノウハウ提供はトップレベルだけの話ではないのかもしれない。アジアでアミティエのような地域密着クラブが増える…そんな国際貢献の形があったら素晴らしい。



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Jリーグにチアリーダーや女子マネは必要か?

学生時代にbjリーグの大阪エヴェッサにインターンしていた時の話。エヴェッサにはセクシーなダンスをするチアがいて、それ目的に試合に来場するファンが一定層いた。エロい目線での写真撮影やWEBへのアップもチームとして認めていて、それをきっかけにバスケに興味を持ってもらえればいいという考え方を教えてもらった。

我がガンバ大阪のチアも今シーズンから衣装がセクシーになったと話題だ。SNSを中心にチアの写真が拡散されている。ピッチとの距離が近いスタジアムの特性を活かした英断だと思う。現状チアの主なコミュニケーション相手は子供だと思うが、対象をおじさんまで拡大すれば来場者は増えるかもしれない。いわゆる「AKB商法」の導入。具体的には、観戦チケットの半券2枚で握手、3枚でチェキ、5枚でハグ。これでどうだ。



視野を広げてみる。なんだかんだあるけど相対的にはJリーグ女子マネ・佐藤美希さんはサポーターから好意的に捉えられているし、WOWOWは放送権をもつリーガエスパニョーラをPRする上で武田玲奈さんを積極稼働させている。サッカーゲームキングの表紙は毎回ユニホーム姿を着たアイドルだし、先日参戦したノエビアスタジアムでは試合前イベントとして「ヴィッセルクイーン」のお披露目イベントをやっていた。

きっともう親和性の高さは証明されているんだろう。実際、サッカー関連での女子ネタは拡散力がすごい。邪道だとは思うが、Jリーグへの興味の入口は多様であるべき。こうしたアプローチの積み重ねの先に1ステージ制が回復して、結果的にJリーグの価値が回復するなら積極的にやって欲しい。

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日本のサッカー文化に多様性を ~ヨコハマ・フットボール映画祭レポート~

ヨコハマ・フットボール映画祭に行ってきた。毎年Jリーグ開幕前の恒例イベントとして楽しみにしている。参加するのは今年で3~4回目だと記憶しているが、年々規模が大きくなっている。いや、規模というより志という表現の方が正しいかもしれない。単純にサッカーの映画を上映するだけじゃない開催意義がこのイベントにはある。


ヨコハマ・フットボール映画祭のマスコットキャラクター

キーワードは「多様性」

公式HPのイントロダクションページを見ると、その意味を理解頂けると思う。映画を楽しんでもらう事をきっかけに、サッカーの力(媒体力)を駆使しつつ様々なアプローチが行われている。今年の場合は「被災地支援」や「パラスポーツ(障がい者スポーツ)への理解」がテーマの1つになっているのだろう。フットボール映画祭から発信する事で伝わるメッセージがある。


映画上映後にはトークショーも。写真は粕谷秀樹さん

また、同様に多様性が表れていたと思うのが「物販」。あまり詳しいジャンルではないのだが、サッカーにおける「同人誌」が販売されていた。クオリティ的にはプロに近いが、要はファン自身によるマニアックなアウトプットである。タイトルだけ見ても名物サポーター密着映像だったり、スタグルのレシピ本だったり・・・万人受けはしないであろうものばかり。ただ、圧倒的な熱量を感じるし、こういうアウトプットの数が増える事が日本のサッカー文化が成熟するという事だと思う。多様性を認めあえる文化は強い。


販売されるサッカーファンブック①


販売されるサッカーファンブック②

このようなイベントを通じて相互理解を深めるアプローチは≪蛸壷化≫が叫ばれて久しいJリーグ(日本サッカー)にとって重要なはず。サッカーの楽しみ方は多様であるべき。オンザピッチもオフザピッチも価値観が偏り過ぎているきらいがある。Jクラブのオフィシャルマスコットではないカエルの一平くんのようなキャラクターが人気者になれる日本サッカー界には多様性を受け入れるポテンシャルはあるはずだ。


1日劇場支配人に就任したカエルの一平くん


カエルの一平くんグッズ

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