【書評/読書感想】「J2&J3フットボール漫遊記」(宇都宮徹壱)

子供の頃は当時全盛期だった金子達仁氏の本を読んでプロサッカー選手の表と裏を知ることに夢中になった。学生時代後半は村上龍氏をはじめとする作家のサッカー観戦エッセイで多角的な視点での観戦術を知った。そして、社会人になってからは今回紹介する本の著者である宇都宮徹壱氏からサッカーを文化として捉えることを学んでいる。

宇都宮氏の本を読むのは「フットボールの犬」「股旅フットボール」「フットボール百景」「サッカーおくのほそ道」につづく5冊目。「J2&J3フットボール漫遊記」ではJ2・J3クラブの現在地がそれぞれのクラブが抱える課題や歴史をふまえつつ紹介されている。クラブと行政の関係性、ゴール裏のジェネレーションギャップ、クラブ施設、ライセンス、人事…etc.

注目点は各章の最後に記載されている【付記】。記事が書かれた「その後」が書かれているのだが、現実は厳しいことを痛感する。インタビューで夢を語っていた監督が解任されていたり、状況が悪化していたり。これがリアル。サッカークラブは夢を語るだけでは生きていけないことを痛感させられる。



■自治体とスタジアム

2017年7月17日(祝)、渋谷の書店で開催された「J2&J3フットボール漫遊記」の出版イベントに参加してきた。テーマは本書の裏テーマでもあった「自治体とスタジアム」について。登壇者は著者の宇都宮氏、ちょんまげ隊のツン氏、サッカー漫画家&愛媛サポの能田達規氏、Jリーグクラブ勤務経験豊富な長岡茂氏、「今そこにあるサッカーを愛せ」ロック総統という日本サッカー界のメジャーとアングラが混ざる面白いメンバー。一見イロモノなツン氏やロック総統は経験談をベースに話すので臨場感と説得力があるし、初めて生で観た能田氏には出版物との本人のキャラクターのギャップに驚かされた。特に能田氏の愛媛愛からくる愛媛批判トークは無双状態で場が大いに盛り上がった。そこに論理的な宇都宮氏&長岡氏が加わり、意外にバランス良い座談会となった。


会場はBOOK LAB TOKYO。参加費は900円

スタジアムについては考えさせられる話題が盛りだくさん。ギラヴァンツが北九州のミクスタの指定管理者ではないという事実がある一方で、FC今治やいわきFCのようなクラブ(企業)主導で専スタを前提としたクラブづくりも存在するというクラブ間のスタジアム利用に対する温度差。Jリーグクラブの地域への影響力を過信する自治体もあれば、軽視する自治体の例もある。宇都宮氏の「地方のJ2やJ3クラブがある自治体ほどJリーグクラブに対する過度な期待があるように感じる」趣旨の発言が印象的。新スタ建設については地域や地域の企業が抱える課題との親和性、自治体(担当者)のやる気、土地やタイミングなどが合致して成立する過程など具体的事例と様々な立場からの見解を学べて有意義だった。


長岡茂氏は現在、スペリオ城北のスーパーバイザーに就任中

長野、吹スタ、北九州と専スタ建設ラッシュゆえにスタジアム建設については追い風が吹いていると感じてしまうが、そんなに甘いものではないと認識を修正。ロック総統が主張する「上を目指さない」というクラブの在り方は過去の反省の結果として今後のトレンドになる可能性はある。そういう多様性はあってしかるべき。前述の【付記】にある通り、現実は甘くない。ただ、一方でサポーターとしての経験からは「上を目指せる事」がサッカーの魅力でもあり、ACLやCWCでの経験は何物にも代えがたいことも事実としてある。夢を見れないクラブ運営にどれだけのフォロワーがつくのかという疑問もある。難しい。

関連記事①:サポーターの光と影 ~北九州アウェイ漫遊記~
関連記事②:『J番記者による大忘年会2016』に参加してきた話







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