【書評/読書感想】「スタジアムの宙にしあわせの歌が響く街」(天野春果)

独自路線をひた走る川崎フロンターレ関連のイベント。その仕掛け人である天野春果氏がそうしたイベントの企画から実行に至る過程を想いと共に紹介している一冊。同じコンセプトである「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」に続く2冊目の出版になる訳だが、それは実現できる(書ける)だけのネタがある(イベントを実施している)という事であり、1冊目が売れたゆえの2冊目でもある。そんな全Jリーグクラブスタッフの中でも稀有な存在である天野氏の仕事術とは。

天野春果 ロスタイムは7分です

本書では「宇宙巨大2DAYS」と「高田スマイルフェス2016」という川崎フロンターレが近年力を入れたイベントにフォーカスが当てられている。共にビッグイベントだがそこに至る過程は実に地道で等身大。出てくる予算は数十万円。上司からは企画を反対され、度々発生する想定外に頭を悩ます様は自分と重ねて読みやすい。政治や桁違いのお金が動く“電通とワールドカップ”のようなテーマのスポーツビジネス本もいいが、リアリティを感じながら読める点で参考になるのはこちらだ。

詳しい記述はネタバレになるので避けるが一冊を通じて印象的なのは「熱量(行動力)」と、それに付随する「人脈(支持者)」の存在。先日、私が所属する会社の≪新規事業セミナー≫で講師が総括として「色々テクニックを話しましたが、最終的には“熱量”が大切です」と話していた事を思い出した。各企画にはキーマンとなる支持者が必ず登場するのだが、彼らは自身の利益ではなく天野氏の熱量によって企画に価値を見出し支援している。

そして、その支持者の多くが一般人(サポーター)である事は驚きだった。サポーターがクラブの他法人との会議に同席するなんて初めて聞いた。先日、ガンバサポーターの飲み会で“サポーター人脈の有効利用”がテーマになったが、某クラブはスタッフがサポーターと近しい関係になるのを禁じているという話を聞いたばかりだったので余計に印象に残った。Jリーグサポーターは当事者意識が強いのは既に自明なので、スタジアム外においても「サポーターはクラブの一員」になる関係性構築は今後クラブが発展する上において参考になるはずだ。

そんな天野氏は今年から東京五輪の組織委員会に出向する。本書を読む限りは仕事が人に紐付いている(天野さんの存在ありき)様にも思えたが、来シーズン以降のフロンターレのイベントに注目したい。何気なく試合前に過ぎ去っていた等々力競技場のブースやイベントも来シーズンは注目しようと思う。今からアウェイ川崎戦が楽しみだ。

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