【書評/読書感想】「ザ・シークレット・フットボーラー」(澤山大輔)

本のタイトルの通り匿名のフットボーラーの暴露本。プレミアリーグのリアルな裏側が具体的なエピソードと共に生々しく紹介されている。翻訳本ながら書き手のシークレットフットボーラーは知的である事が窺い知れ、そのフィルターを通じてあらゆる出来事が紹介される事で表面的には分からない深い部分まで捉える事ができる面白さがあった。

■選手とファン

あらゆるテーマ毎に章立てされているのだが、一番興味深かったのは「ファン」の章。「ファンは何も分かっていない」とし、その具体例として試合中にボールキープの意味や価値を知らずにボールを前に運ぶ事を促す野次への苦言はまるでガンバサポーターの事を言われているかの様。個人的にも試合中に理解できないブーイングは多く、選手を苛立たせているだけである結果を間接的に知る事で悲しい気持ちになった。

また、野次についても言及されていたのだが、この部分は来シーズンから新スタでピッチとの距離が近づく我々サポーターは強く認識しておいた方がいいポイント。要は今まで以上にダイレクトに選手に伝わるし、その野次に慣れていない選手達が過剰反応してトラブルに発展する可能性がある。トラブル回避のための術として、ガンバの選手が全員ヤットみたいなリアクションしかしなくなった世界は想像しただけで悲しい。そういう世界を創ってはいけない。我々サポーターはスタジアム内での変な集団心理は抑制すべき。もはや新スタでは匿名性はないものとして意思表示した方がいい。新スタがマナーも向上させる方向性に機能してくれたらいい。

ザ・シークレットフットボーラ―

■プロサッカー選手として生きる辛さ

その他、「監督」「バカンス」「金」「メディア」など色んなテーマでサッカー界の裏事情が書かれているのだが、どれも日本では考えられないスケール。リアリティはあるが、ぶっ飛んだエピソードばかりでもはやフィクションという不思議な世界。傍から見れば華やかな世界も、精神を蝕まれる面もあるようで「ザ・エンドルーム」と題された最終章では衝撃の告白も・・・・。

選手として成功すればするほど感覚が世間とズレる事の悲しみや、自分を見失いそうになる恐怖。このシークレットフットボーラーの告白を読みJリーガーでもセカンドキャリアで苦労した方々の顔を思い出した。彼らは孤独だなと。輝ける時間は人生の中で長くなく、薬に逃げたくなるのはある種仕方ない事なのかもしれないと。改めて色んな意味ですごい職業だ。こんな職業が子供も夢でいいのだろうか。義務教育の道徳の時間にこの本を読ませた方がいいんじゃないだろうか。

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