【書評/読書感想】「ヒーローインタビュー」(坂井希久子)

フィクション小説。阪神タイガースに入団したものの、ポテンシャルがなかなか開花せずに二軍暮らしが続くバッター「仁藤全」が主役。ただ、主人公の一人称では書かれておらず、物語は全て仁藤の関係者による証言という形で進められる。基本的には人間ドラマ。本書のレビューを読んでもそこへの評価が高い一冊。ただ、個人的にはこの一冊はスポーツが持つ魅力も上手く表現されていると思う。

ヒーローインタビュー 坂井希久子

■ワンプレーの裏に十人十色のドラマがある

前述の通りこの物語は主人公の関係者の証言によって物語が進められている。球団スカウト、片思いの相手、チームメイト、ライバルチーム選手、高校時代のチームメイト・・・それぞれにはそれぞれの仁藤全への想いがある。関係者間には面識はないものの、仁藤全という選手を応援したいという想いは共通している。そんな彼ら彼女らがある重要な一戦でスタジアムに集結し、仁藤全のキャリアハイライトとなるプレーを目撃した時の心理描写が秀逸で、自身のスタジアムでの経験も甦って泣けた。

年齢、性別、立場を越えて同じものを応援するという「想いの共有」ができる事がスポーツの最大の魅力だと個人的には思っている。勿論、その想いの種類や強弱はバラバラ。本書でも仁藤全を応援する想いの中に「恋心の芽生え」がある人間もいれば、「後悔」がある人間もいる。色んな想いが混じっているからこそ、サッカーであればゴールの瞬間、野球であればホームランの瞬間などに爆発的な熱狂がスタジアム・球場を包むのだと思う。本書では登場人物全ての想いを一人で背負ってそのプレーを目撃できるのでお得です。

これからW杯本番に近づくにつれてこの小説のように代表メンバーの親や恩師など関係者のコメントを大量に見聞きするはず。実際、サプライズメンバー入りの大久保の親父の話なんて既にTVで10回以上観た。うんざりしがちなこの手の煽りも我慢して見ればW杯本番の試合でより感動できるのかも・・・。そんな風に思わせてくれるナイスタイミングな一冊。

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