【書評/読書感想】「勝利のルーティーン -常勝軍団を作る、習慣化のチームマネジメント-」(西野朗)

遂にJリーグが開幕しました。今シーズンも色々と注目点はあると思うのですが、個人的には我がガンバ大阪の動向以外では西野朗監督のグランパスでのチャレンジに注目しています。ガンバでの10年間が西野監督の株を高めた訳だけど、ヤットやフタ、ハッシー、智とタレント的にも選手は揃っていた中の結果であり、本当に手腕が問われるのは今回のチャレンジではないかと。

という事で、そんな新たな西野朗監督のチャレンジをより楽しむために西野さん本人著「勝利のルーティーン」を読んだ。タイトルの通り、西野監督の監督業の哲学がつまった一冊となっております。

「私が10年間率いたガンバ大阪は、最終的に、本当にスペシャルなチームになったと思う。」

という言葉からスタートする本書は表紙のカバーが青色だったり、構成担当が佐藤俊さんだったりからも分かる通り、完全にガンバ本。グランパスサポも西野監督の哲学を探る意味では読めると思いますが、具体的事例のほとんどがガンバのエピソードですのでご注意を。具体名もバンバン出てくるし、ガンバサポはちょっとした暴露本としても楽しめます。個人的にはヤットに関する記述はお互いに実力は認め合っているけども、同時に微妙な距離感も感じさせるような・・・まあ、深読みし過ぎなのかもしれないけれど。

勝利のルーティーン(西野朗)


■西野朗とガンバ大阪の相性の良さ。そして、マンネリズム


西野監督は戦術に選手を当てはめるタイプではなく、選手の特性から戦い方を模索するタイプ。ただ、理想としての戦い方は持っており、それは「攻撃的」という言葉でも表現できるし、「バルセロナ(クライフ)」の影響も強く受けている事は自他共に認めるところ。それはアトランタ五輪日本代表での守備的な戦い方が批判された事が背景にあるのは有名な話で、攻撃的なスタイルで見返したいという想いを持っている中でそうしたスタイルが合う選手達(しかも、若い)が沢山いるガンバからのオファーがあった事は幸運だったし、西野監督がどういうアプローチでチームを作ろうが最終的には今のガンバのスタイルは確立された気がする。西野監督自身もガンバに関して本書で「相思相愛」「運命的」という言葉で相性の良さを書いている。

ただ、そんな西野とガンバにも終わりが訪れる。長期政権ゆえのマンネリについての苦悩が書かれてある第3章が本書最大の読み所。08年のACL制覇をきっかけに一種のバーンアウトに陥っていたチームを更に成長させたいものの、高レベルに達しているチームを変える難しさがあったと回想。本書のタイトルでもある「ルーティーン」の結果が当時のガンバであって、そこを変えるリスクを西野監督は選ばなかった。実際、変えるという選択をクラブが取ったセホロペ体制では降格という結果に至っているので結果的に西野監督は正しかったのもかしれない。

一方で、リーグ優勝が求められているチームにおいて05年以降リーグ優勝できなかった事も事実で、優勝のために何かを変えなければならなかったけど、変えられない西野監督を交代させたクラブの判断自体は悪くなかった。実際、西野監督自身も本書内で2010年シーズンは長期政権ゆえのコミュニケーション不足は認めており、新加入選手に対してもずっと一緒にいる選手達と同様の接し方をしてしまった事を「マンネリ」がもたらしたのかもしれないとして後悔している。何かを変えられる新加入選手達へのアプローチを間違えたのは痛恨だった。新加入選手がフィットしない事例は多々あったけど、こうした事実も少なからずあった事を知れた。

また、自身が築いたガンバのスタイルが確立しすぎて(?)、試合状況的にパワープレーなど違うスタイルで戦いたいと思っても選手達がついてこなかったという記述も。そのリーダーがヤットだったようで、いつの間にか西野監督以上に選手達が自分達のスタイルに拘っていたというのは何とも微妙。西野スタイルを実践できる選手達は強みでもあり、最終的には弱みにもなったのかもしれない。メンバー固定化の弊害としてJ2降格と共に忘れてはいけない経験。

■西野朗監督は名古屋グランパスで成功できるのか


完全に余計なお世話ですがね。正直、分からないし。ただ、考えるヒントが本書でちょっとだけ書かれているヴィッセル神戸監督時代の話。要は失敗談なのだけど、失敗の要因として「西野監督と神戸のスタイルのミスマッチ」が挙げられている。西野監督は前述で「戦術に選手をあてはめるタイプではない」と書いたものの、長年同じスタイルで戦ってきているチーム(神戸の場合はカウンター)に新しいエッセンスを加える難しさはあったようで、その点で前任者が長期政権だった名古屋は神戸と近い部分はあるかもしれない。(ガンバはこれで降格しました)

ただ、神戸と違うのはシーズン途中の就任ではない事と、技術的に神戸より高い選手が揃っている事。チーム作りは神戸時代よりはスムーズだと思う。それに攻撃的なスタイルが名古屋でも変わらないとして、ガンバではDFの選手から反発もあったようだけど、名古屋のDFリーダーが闘莉王であるという点からその心配も無さそう。いや、むしろ名古屋において闘莉王が一番攻撃的なので逆に西野監督がそれを抑えるという事態が発生するかもしれない。ガンバの専売特許だった「馬鹿試合」が名古屋に奪われる心配が出てきた。とりあえず、ガンバー名古屋の試合が今から楽しみ。

P.S.本書は上記以外にも、06年天皇杯決勝など具体的な負け試合を事例に挙げて書かれている「采配論」や、なぜ国内で活躍した外国人選手ばっかり獲得するのかが分かる「外国人選手獲得論」、オーナー制の神戸では確立できない「クラブ組織論」など結構細かく西野監督の哲学が書かれているので本当にオススメです。ガンバ関連本では過去一番面白かったかも。

関連記事①:【書評/読書感想】「一流のリーダーたちから学ぶ勝利の哲学 今すぐ実践したい指導の流儀」(長谷川健太)
関連記事②:【読書感想】「眼・術・戦~ヤット流ゲームメイクの極意~」(遠藤保仁×西部謙司)

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