伝説は“雨”とともに -浦和レッズ戦-

森高千里は「」を思い出も涙も流すものとして捉えていたようだが、ことJリーグに関して雨はむしろ記憶を助ける要素のひとつである。今節も後半アディショナルタイムの同点弾という劇的展開は雨の冷たさと共にずっと記憶される。得てして「雨」は伝説となるものの必要要素にもなっていて、近年では音楽ライブもその傾向があるし、「きつねの嫁入り」は雨伝説そのもの。

ポジティブな文脈で語られることの多い雨の伝説だが、実際問題は苦痛でしかない。今日も朝から惰性でシート貼りをしたものの、開門を待つ浦和御園イオンでは試合の延期を祈った…が、その想いは叶わず今に至る。試合後、埼玉高速鉄道の窓に映る雨に濡れた自分は朝より少し老けた気がした。

そして、現在は朝にはなかった喉の痛みに苦しめられている。金曜日の夕方「日曜日は雨なのにガンバの試合なんですよねぇ~」と会社でヘラヘラと喋ったせいで明日熱が出ても会社を休みにくい。「サッカー観戦で体調を崩して会社を休む奴」など社会人失格だ。まあ、紛れもない事実ではあるのだけど。


両ゴール裏は屋根がなくびしょ濡れ…

■最後まで頑張れた理由は?

4日前の水曜日には同じく埼スタで開催されたACL準決勝を観戦した。高い集中力で挑んだことが分かる一戦だったので、その試合からメンバーをさほど変えなかった浦和は消耗していたはずなのだが、そんな相手に各局面において一歩目の早さで上回られる展開にはガッカリした。なぜこのようなことが起きるのか…と。

ただ、結果的には3-3の同点で試合終了。浦和の消耗に助けられた部分も大きいが、勝っても負けてもあまり大きな意味をもたらすことのない一戦で選手達が最後まで頑張れた理由は何だったのだろう。1%でもサポーターの声援がその理由になっているのであれば喉の痛みは無駄じゃない。勝ち点1で喜ぶゴール裏の様子を見て、選手達が何か感じてくれたらいい。

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井出遥也のスタメン抜擢&東口順昭の活躍から考える“自己評価” -アルビレックス新潟戦-

私の勤めている会社では年に2回“自己評価シート”なるものの提出が義務付けられている。いくつかある項目に対して自分の仕事ぶりを1~5点で自己採点するのだ。「評価は他人からされるものであって自分でするものではない」と、自己評価シートを空欄で提出したら上司から怒られた。

今節、井出遥也がスタメンに抜擢された。怪我人や出場停止こそあれ急激にチーム内の序列が上がっている。ルヴァンカップのゴールが評価されての抜擢だと推測するが、良くも悪くも評価は水物だと思わずにはいられない。今節、井出のプレーは十分及第点を与えられるレベルだったが、千葉時代の実績を考えればルヴァンカップ以前から彼はこれくらいのプレーは出来たはず。つまり、評価されていなかっただけだ。

一方、日本代表のテストマッチ3失点で評価を落としたのは東口順昭。どの失点もGKの責任とは言い難いものだと思うが3失点という結果が必要以上に重く捉えられている。ガンバでの実績を知っている身としては納得いかない。こちらは井出とは逆の形で評価の危うさを痛感する出来事だった。


本日公開された「ROHTO」のCMでも活躍した東口順昭選手

「評価は他人からされるものであって自分でするものではない」という考え方は改める必要があるかもしれない。他人の評価なんて信用ならない。自分のことを一番理解しているのは自分である以上、自己評価の大切さを再考している。他人の評価に左右されず自分を評価し、自信を持っていたからこそ井出はチャンスを掴みつつあるし、東口も代表明けの今節でファインセーブを連発できたのではないか。

自分を信じられなければ未来は切り開けない。井出や東口のプレーを観て思う。自己評価シートで5点をつけられる自分になろう。それはそれで上司から「謙虚さが足りない」と怒られそうだけど…。

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【書評/読書感想】「スポーツビジネスの教科書 常識の超え方 35歳球団社長の経営メソッド」(池田純)

元横浜DeNAベイスターズ社長であり、現在はJリーグ特任理事などを務める池田純氏が著者。直近ではBリーグ・川崎ブレイブサンダースの友好的買収が話題になったスポーツビジネス界のトップランナー。横浜ベイスターズ社長時代の経験を中心に自身が考えるスポーツビジネスの在り方が紹介されている。スポーツビジネスを学びたい方は必読の一冊。



■チームの基本戦術

読み所は非常に多いが、一番興味深かったのはベイスターズの基本戦術を一冊の本で明文化する取り組み。サッカーではFC今治の「岡田メソッド」が知られているが、「型」をつくるアプローチはスポーツ界のトレンドになりそうな予感。個人的にも「ガンバ大阪=攻撃的」という世間の印象が根付きつつある中、実際に今行われているサッカーは守備的でつまらないものになっている現実に打ちひしがれているタイミングだったので余計にそう感じた。

監督・選手の獲得や評価もその型に合うか合わないかの基準で考えれば継続性が生まれる。そういう意味では近年ガンバ大阪に西野黄金時代を経験しているOBがスタッフとして出戻ってきていることは期待感がある。同じサッカーを経験している恒や智、聡太らが中心となって「ガンバの型」を創ってほしいし、それは攻撃的であって欲しい。

■ビジネス面での強化がチームを勝たせる

上記以外にも「横浜スタジアムのTOB」、「ストーリーとセットで食べ物やグッズを売る方法」、「ソシオ制度」などスポーツビジネスの最新トレンドとも言える事例や考え方が多く紹介されており、近年のスポーツビジネス書では一番内容が濃かった。我々ガンバサポーターは夏の大阪ダービーでそれを実感したが、集客(ビジネス)面での強化がチームの後押しになるのは明らか。プロジェクションマッピングや記念ユニホームなど集客につながっている企画も生まれつつあるので、テンポラリーで終わるのではなく、季節の風物詩的に定着させてもらえれば嬉しい。「鷹の祭典」のような鉄板定番イベントが生み出せればクラブは更に成長できる。チームとしては「タイトル奪取」が明確な目標として広報されているが、ビジネス的にも「平均観客動員数」など明確な目標を発表してもいい。

日本のプロスポーツがエンタメ化するのは良いこと。今後、日本のプロスポーツの楽しみ方はますます多様化する。

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集大成 -ルヴァンカップ準決勝 セレッソ大阪戦-

【ガンバ大阪 1-2 セレッソ大阪】

長谷川健太監督の時代が終わっていたことを再確認させられるだけの辛い試合だった。ホーム開催の大阪ダービーにおいて押し込まれる展開を5バックで耐え抜くことを選択し、負ける。長谷川健太監督の終わり方に相応しい。栄光は常に過去形でしか語られない。こんな敗戦は受け入れられない。

そんな中で望むのはこの緊張感ある一戦を経験した若手選手達が敗戦を糧にして成長してくれること。野田しかり、平尾しかり、数分の出場時間であってもJ3で何試合出場しても得られない経験値を得たはず。1点の重み。ワンプレーの重み。敗戦したからこそ得られる成長もある。J3でぬるく失点を重ね続けている経験値では戦えない。

第1戦では赤﨑や井出のゴールで総力戦のポジティブな面が出たが、第2戦は逆に総力戦だからこその限界が露呈された。昨年のルヴァンカップ決勝のエントリで私はこんなことを書いていた。

ただ、その危機感や敗戦の悔しさはサポーターにとってモチベーションでもある。ビッグゲームでの敗戦こそクラブ愛が深まるもの。一つのサイクルが終焉したと思っていたチームが見せた前半のハイパフォーマンス、延長後半まで劣勢を耐え続けた意地や執念はこのチームがまだ死んでない事を証明していた。球際や運動量で無双状態だった井手口を筆頭に個人レベルで大いなる伸びしろを感じる選手もいる。



チームは蘇らなかった。昨年でサイクルはやはり終焉していて、今年はただ死を待つばかりのシーズンになった。井手口は期待通り成長したが、チームを去ろうとしている。私のクラブ愛もこの敗戦では深まっていない。

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【書評/読書感想】「J's GOALの熱き挑戦」(Jリーグメディアプロモーション編著)

2009年9月初版なので8年前に発売された一冊。ここ数年は紆余曲折あったが、「J's GOAL」の成長過程や苦悩、PV数向上への工夫が紹介されている。2009年からWEB環境は大きく変化してはいるが人気サイトの運営において不変である要素は多く、今読んでも非常に勉強になった。

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個人的に本書を読んで感じたキーワードは「サポーター目線」

J's GOALはとにかくサポーターを主役に置いたコンテンツ開発の視点が秀逸だった。スタジアム内の応援だけではなく、関連する様々なコンテンツをトータルで楽しんでもらおうとするアプローチは業界初だったのではないかと記憶している。スタジアムグルメ、ゲーフラ制作マニュアルに代表されるピッチ外企画の数々がサポーター文化を豊かにしたし、共感を呼んだ。これは他社サイトとの比較から自分達の強みを深堀した結果生みだされたサイト運営方針らしい。

また、サポーター参加型の企画を重視した点も既存メディアとの違いで、「声援音量計測」「お宝紹介」などの企画はJリーグサポーターの代表的なメンタリティである“当事者意識の高さ”を大いにくすぐった。人によってJリーグに興味を持つきっかけは様々。カッコいい選手がいるから、美味しいグルメがあるから、素晴らしいスタジアムがあるから…Jリーグの人気が下火になっていた時代は多様性を認めず「Jリーグ(サポーター)はこうあるべき」という空気感があったようにも記憶しているが、J's GOALには“邪道”が存在せずコンテンツを量産した。

数ある中でも代表的なものが「ACL遠征企画」。今では信じられないが「ACL=罰ゲーム」と捉えるサポーターも多かった時代に日本を代表して異国で戦える価値をブランディングした功績は大きい。情報が少ない異国クラブスタジアムへのアクセス方法を現地取材で記事化するなどサポーターのACL遠征をバックアップした。私もACL遠征を始めた当初はJ's GOAL記事のプリントアウトを片手に遠征した記憶がある。

コンテンツの価値は自分達が育てるもの。自分達が好きなものの魅力を一生懸命世の中に広める仕事は素敵だ。

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