【書評/読書感想】「国際スポーツ組織で働こう!」(つくば国際スポーツアカデミー・アソシエーション編)

我らが宮本恒靖監督がプリントされた本の帯に惹かれて購入した一冊。ツネ様に関する記述を期待していたが、一切出てこなかった。ガンバサポーターの皆様におかれましてはご注意あれ。

国際スポーツ組織で働こう

■国際スポーツ組織で働くために必要な能力とは

本書はタイトルの通り国際スポーツ組織で働くためのアドバイスが記載されている一冊。“国際スポーツ組織”とは分かりやすい例でいえばFIFAやIOCなど。実際に国際スポーツ組織で働く日本人のインタビューや、そこに至る上で必要となる知識・学び方が記載されている。

「英語でディスカッションができる事が前提条件」と書かれている時点で私は対象外なのだが、それ以外の部分においてはドメスティックな仕事をする上でも参考(必要)になる要素が書かれている。FIFAではなくJFA、IOCではなくJOC。要は各都道府県のスポーツ協会を“まとめ役”的な組織で働く上で必要な事が多々書かれていた点は自分の仕事と共通する部分が多く、一般ビジネス参考書としても面白く読ませてもらった。

どの組織においても共通して必要となる要素として出てくるキーワードは「ガバナンス」。具体的にはルール作りや、エンゲージメントを意識した(関わる人を増やす)企画を考える能力の事。「国際」スポーツ組織となるとビジネス相手が異文化である苦労もあるので、相手の事もよく理解したコミュニケーション能力が求められるのだろう。「ダイバーシティマネジメント」という言葉で表現している組織人もいた。

ワールドカップサポーター記念撮影
ワールドカップの様な国際大会に関われる仕事は魅力的

■チャンスに備える

就活本でもあるのでキャリアについての記載も多いのだが、この手の本における登場人物は皆、能動的な行動力が凄まじい。思い立ったら即留学なんて当たり前。脱サラなんて怖くない。人材募集をしていない組織に電話しまくり、履歴書送りまくりの自己アピール祭り。無理矢理アポを取って、その場でプレゼンして契約社員の座をゲット。私には真似できません・・・。

ただ、ここまでの行動力はないがらもチャンスに備えて準備はしておこうかなという気になった。つまり、お勉強。学生時代からスポーツビジネスは好きだし、今勤めているメディアの会社もスポーツビジネスの一端である事は間違いない。ただ、自分がやりたいスポーツビジネスとは少し違う。もっとグラスルーツな現場に近いスポーツの世界への興味がある。案外チャンスは身近に転がっているような気がしているのだ。

それは2020年の東京五輪後の日本を想像する事や、「スポーツのグラスルーツ」をテーマに会社に新規事業の企画書を出したりした事から感じているものだと思う。本書に記載されている社会人向け夜間スポーツビジネス学校が勤務地から近かったりする事で余計リアルなものとして想像できた。チャンスが転がってきた時に手を挙げられるくらいの準備はしていて損はないはず。

本書を読んでスポーツビジネスを勉強したい欲が再燃した。会社が学校に通う学費を出してくれるかもしれないかな・・・なんて妄想をしながらも、上記企画書を片手間で仕上げた事を後悔した。

関連記事:【書評/読書感想】「スポーツ事業マネジメントの基礎知識」(金森喜久男)



【書評/読書感想】「サッカーおくのほそ道」(宇都宮徹壱)

一言で表現するのであれば「サッカーに対する考え方の多様性」を紹介した本。企業、選手、スポンサー、サポーター、スタッフ、監督・・・あらゆる立場の目線から“我がクラブ”を愛し、愛するゆえに苦悩し、もがく様を第三者の目線で書かれてある。サッカーはピッチ外の戦いも熱い。ノンフィクションでありながら、ドラマ性も高いので本の世界に没頭して一気に読み終えた。宇都宮さん著なので、もちろん取材対象はアンダーカテゴリー。初見の情報が多いのも魅力。


マスコットにも詳しい事で有名なライター・写真家 宇都宮徹壱さん(写真右)

印象深いのは東京武蔵野シティFCを紹介する章に書かれてある宇都宮さんの想い。宇都宮さんの地元クラブである東京武蔵野シティFCに対してJリーグクラブになるより、ビッグクラブになるより、身近に寄り添う存在であり続ける事を望んでいる・・・これは一冊を通じて一番伝えたいメッセージだったと推測する。ホンダロックSCのサポーターで「今そこにあるサッカーを愛せ!」と唄い続けるロック総統、奈良クラブで奈良劇場総支配人をエンジョイする岡山一成、ブリオベッカ浦安でクラブとしてはJリーグを目指せない中でも世界に羽ばたく選手を育てる事に熱い想いを持つ都並敏史・・・皆、Jリーグを目指すクラブ関係者よりイキイキと描かれていると感じたのは気のせいではないはず。

各章の最期には【付記】という形でクラブの“その後”が簡潔に紹介されているのだが、現実は甘くない事を教えさせられる。何かを犠牲にして、リスクを冒して上を目指すだけが選択肢ではないという価値観。それは決してネガティブな事ではないという考え方がこの本を通じて日本のサッカーファンに広がれば素敵だ。

関連記事①:【書評/読書感想】「フットボール百景」(宇都宮徹壱)
関連記事②:『J番記者による大忘年会2016』に参加してきた話



【書評/読書感想】「スタジアムの宙にしあわせの歌が響く街」(天野春果)

独自路線をひた走る川崎フロンターレ関連のイベント。その仕掛け人である天野春果氏がそうしたイベントの企画から実行に至る過程を想いと共に紹介している一冊。同じコンセプトである「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」に続く2冊目の出版になる訳だが、それは実現できる(書ける)だけのネタがある(イベントを実施している)という事であり、1冊目が売れたゆえの2冊目でもある。そんな全Jリーグクラブスタッフの中でも稀有な存在である天野氏の仕事術とは。

天野春果 ロスタイムは7分です

本書では「宇宙巨大2DAYS」と「高田スマイルフェス2016」という川崎フロンターレが近年力を入れたイベントにフォーカスが当てられている。共にビッグイベントだがそこに至る過程は実に地道で等身大。出てくる予算は数十万円。上司からは企画を反対され、度々発生する想定外に頭を悩ます様は自分と重ねて読みやすい。政治や桁違いのお金が動く“電通とワールドカップ”のようなテーマのスポーツビジネス本もいいが、リアリティを感じながら読める点で参考になるのはこちらだ。

詳しい記述はネタバレになるので避けるが一冊を通じて印象的なのは「熱量(行動力)」と、それに付随する「人脈(支持者)」の存在。先日、私が所属する会社の≪新規事業セミナー≫で講師が総括として「色々テクニックを話しましたが、最終的には“熱量”が大切です」と話していた事を思い出した。各企画にはキーマンとなる支持者が必ず登場するのだが、彼らは自身の利益ではなく天野氏の熱量によって企画に価値を見出し支援している。

そして、その支持者の多くが一般人(サポーター)である事は驚きだった。サポーターがクラブの他法人との会議に同席するなんて初めて聞いた。先日、ガンバサポーターの飲み会で“サポーター人脈の有効利用”がテーマになったが、某クラブはスタッフがサポーターと近しい関係になるのを禁じているという話を聞いたばかりだったので余計に印象に残った。Jリーグサポーターは当事者意識が強いのは既に自明なので、スタジアム外においても「サポーターはクラブの一員」になる関係性構築は今後クラブが発展する上において参考になるはずだ。

そんな天野氏は今年から東京五輪の組織委員会に出向する。本書を読む限りは仕事が人に紐付いている(天野さんの存在ありき)様にも思えたが、来シーズン以降のフロンターレのイベントに注目したい。何気なく試合前に過ぎ去っていた等々力競技場のブースやイベントも来シーズンは注目しようと思う。今からアウェイ川崎戦が楽しみだ。

関連記事:【書評/読書感想】「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」(天野春果)



【書評/読書感想】「スポーツに恋して」(篠原美也子)

感傷的にスポーツを観るという行為は楽しい。プレーひとつひとつに必要以上に意味を持たせたり、自分の想いを重ねたり・・・。得てして観客はスポーツに過剰な夢や想いを託し過ぎている嫌いはあると思うので、サポーターブログ等を選手が読めば失笑だとは思う。しかし、もうそれは習慣と化している。やめられない。

そんな感傷的にスポーツを観る醍醐味を上手く表現してくれたスポーツコラム集が今回紹介する「スポーツに恋して」。書き手は篠原美也子さん。本業は音楽家(シンガーソングライター)という事で、言葉の選択が面白い。スタジアムの移転(取壊し)前のスポーツ観戦を「死に目に会えた」と表現する感じ。実にセンチメンタルで好き。また、スポーツそのものに対するレビューというよりも、スポーツを入口に多様な自分の感情を書くスタイルでもある。村上龍さんや、奥田英朗さんなど言葉を仕事にする人達のスポーツコラムは専門家よりも視野や感情が豊か。

オリジナリティという面では「母として」サッカー少年である息子について書いてある点。この本の一番の読み所でもある。我が子が対象ゆえに感傷的なスポーツ観戦が爆発。当然、愛に溢れているのだが、選手達を観る(応援する)我々サポーターも共感できる部分は多かった。特にどのスポーツも共通してもっている「儚さ」に関する言及が秀逸で、その儚さに対する想いや優しさを息子を見る母の目線で感じられる。

スポーツに恋して

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【書評/読書感想】「世界一分かりやすい!フットサルの授業」(ミゲル・ロドリゴ)

フットサルの話。

ただボールを蹴るだけで上達した10代とは違い、30代になってからは強く意識して行動しないと何も得られなくなった。努力が当たり前のように自分を裏切る事も多くなった。ただ、不思議なものでそうした年齢的な衰えを感じ始めた頃からフットサルへの熱量が増した。抗いたい気持ちや、自分はこんなものではないという反骨心の芽生え。20代の頃に本気でプレーしていなかった事を悔やむ日々。

世界一分かりやすいフットサルの授業

■原点回帰。基礎が大切

フットサルへの意識が高まった結果、最近はあらゆるインプットを繰り返している。Fリーグを観に行ったり、クリニックを受けたり。読書もその一環。今回紹介する一冊はフットサル日本代表監督のミゲル・ロドリゴ著のフットサル基礎知識紹介本。全10章立てで攻守におけるチーム・個人の基礎的戦術がイラスト付きで分かりやすく簡潔に紹介されていてる。

一応、小学生~大学生とサッカーをしてきた人間なのでそれなりに知識や経験はあるが、上手くいかない時は基礎を見失っている時だったりするもの。成長も基礎あってこそ。そういう意味では本書を読む事で新発見はないながらも再確認できた部分はある。

例えば・・・

【守備】
●ボールが動いている間に寄せる
●利き足側を切る
●インターセプトは死角から

【攻撃】
●ファーに詰める意識
●フェイクの動き
●ボールを動かすトラップ

このあたりは案外他の事を意識すると1つ~2つ蔑ろにしてしまう事はある。フットサル大会によって試合を録画してWEB上にアップしてくれるが、そうしたサービスで自分のプレーを確認するとよく分かる。

個人的には最近「スプリント回数」や「攻守の切り替えの早さ」、「球際の激しさ」、「プレー中の姿勢」などボールと直接的には関係ないアスリート寄りな事ばかり意識してプレーしていたので、本書を読む事で試合中に意識すべきポイントのバランス感覚は是正されたんじゃないかと思ってる。

フットサル 代々木体育館

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