「スロースターター」からの脱却 -アデレード・ユナイテッド戦-

【アデレード・ユナイテッド 0-3 ガンバ大阪】

中継でもガンバを表す代名詞として使われた「スロースターター」。序盤戦は弱い事を示す一方で、自力があるゆえに序々に巻き返すという意味も含まれているので一概にネガティブな言葉とも決めつけられないのだが、こういう代名詞は結構やっかい。ある種の自己暗示に陥るリスクがある。

「俺はスロースターターだから・・・」

は心の隙となる。

過去の類似実績的には【ロスタイムに失点するチーム】というイメージがクラブを苦しめた事があるが、その不安はスタジアムの空気を支配し、相手チームの勇気となった。代名詞というか、イメージというか・・・そういうものは案外馬鹿にできない。

では、どのように打開するのか。成功体験しかない。つまり、序盤戦で勝つ。開幕戦を「1/数十試合」と捉えるか、「シーズンを占う重要な一戦」と捉えるかは意見が分かれるだろうが、ガンバにおいては前述の事情から後者の意識で挑むべきだと思っていた。そして、掴んだ成功体験。この意味は大きい。

負ければ負のスパイラルに突入する可能性もあった。昨年のACL未勝利の記憶が蘇る。「生みの苦しみ」「1点入れば変わる」・・・昨シーズンのパトリックはシーズンを通じてこれに苦しめられた訳だが、視点をチームから個人に移して2017シーズン序盤2試合を振り返ると、得点を欲する長沢・アデは既にゴールが生まれた事でプレッシャーからは解放され、新加入コンビであるセンターバックも2試合連続の完封勝利で落ち着けるはず。

実は「スロースターター」の背景にはここ数年序盤戦の対戦カードが厳しかったという事実もある。アデレードやジョホールを見下す訳ではないが、序盤戦の重要度を考えれば今シーズンは対戦相手に恵まれている幸運も忘れてはいけない。

関連記事:センターバック革命 -ジョホール・ダルル・タクジム戦-




【書評/読書感想】「国際スポーツ組織で働こう!」(つくば国際スポーツアカデミー・アソシエーション編)

我らが宮本恒靖監督がプリントされた本の帯に惹かれて購入した一冊。ツネ様に関する記述を期待していたが、一切出てこなかった。ガンバサポーターの皆様におかれましてはご注意あれ。

国際スポーツ組織で働こう

■国際スポーツ組織で働くために必要な能力とは

本書はタイトルの通り国際スポーツ組織で働くためのアドバイスが記載されている一冊。“国際スポーツ組織”とは分かりやすい例でいえばFIFAやIOCなど。実際に国際スポーツ組織で働く日本人のインタビューや、そこに至る上で必要となる知識・学び方が記載されている。

「英語でディスカッションができる事が前提条件」と書かれている時点で私は対象外なのだが、それ以外の部分においてはドメスティックな仕事をする上でも参考(必要)になる要素が書かれている。FIFAではなくJFA、IOCではなくJOC。要は各都道府県のスポーツ協会を“まとめ役”的な組織で働く上で必要な事が多々書かれていた点は自分の仕事と共通する部分が多く、一般ビジネス参考書としても面白く読ませてもらった。

どの組織においても共通して必要となる要素として出てくるキーワードは「ガバナンス」。具体的にはルール作りや、エンゲージメントを意識した(関わる人を増やす)企画を考える能力の事。「国際」スポーツ組織となるとビジネス相手が異文化である苦労もあるので、相手の事もよく理解したコミュニケーション能力が求められるのだろう。「ダイバーシティマネジメント」という言葉で表現している組織人もいた。

ワールドカップサポーター記念撮影
ワールドカップの様な国際大会に関われる仕事は魅力的

■チャンスに備える

就活本でもあるのでキャリアについての記載も多いのだが、この手の本における登場人物は皆、能動的な行動力が凄まじい。思い立ったら即留学なんて当たり前。脱サラなんて怖くない。人材募集をしていない組織に電話しまくり、履歴書送りまくりの自己アピール祭り。無理矢理アポを取って、その場でプレゼンして契約社員の座をゲット。私には真似できません・・・。

ただ、ここまでの行動力はないがらもチャンスに備えて準備はしておこうかなという気になった。つまり、お勉強。学生時代からスポーツビジネスは好きだし、今勤めているメディアの会社もスポーツビジネスの一端である事は間違いない。ただ、自分がやりたいスポーツビジネスとは少し違う。もっとグラスルーツな現場に近いスポーツの世界への興味がある。案外チャンスは身近に転がっているような気がしているのだ。

それは2020年の東京五輪後の日本を想像する事や、「スポーツのグラスルーツ」をテーマに会社に新規事業の企画書を出したりした事から感じているものだと思う。本書に記載されている社会人向け夜間スポーツビジネス学校が勤務地から近かったりする事で余計リアルなものとして想像できた。チャンスが転がってきた時に手を挙げられるくらいの準備はしていて損はないはず。

本書を読んでスポーツビジネスを勉強したい欲が再燃した。会社が学校に通う学費を出してくれるかもしれないかな・・・なんて妄想をしながらも、上記企画書を片手間で仕上げた事を後悔した。

関連記事:【書評/読書感想】「スポーツ事業マネジメントの基礎知識」(金森喜久男)



センターバック革命 -ジョホール・ダルル・タクジム戦-

【ガンバ大阪 3-0 ジョホール・ダルル・タクジム】

この試合は3つのポイントに注目していた。

①新しいセンターバック コンビ
②ヤットのアンカー起用の是非(守備面の不安)
③オプション泉澤


②に関しては相手のレベルがさほど高くなかった事もあり、検証先送り。相変わらずの井手口の充実を観ていると、後半ヤットOUT→泉澤INで変更したボックス型4-4-2が最終的なベストシステムになりそうな気もするが、オプションは多いに越した事はない。③も出場時間が短かったので同様に検証先送り。一度クロスを上げるシーンがあったが、ボールタッチの雰囲気に佐々木勇人を思い出した。

この試合最大のサプライズであり、収穫は①の新しいセンターバックコンビ。いきなり総入れ替えを監督が判断するだけの事はあった。もちろん②同様に相手のレベルも考慮しつつ評価しなければならないながらも、「対人の強さ(空中戦含む)」「ビルドアップ」においてハイパフォーマンスだった事が嬉しい。なぜなら、そこは昨シーズンまでのレギュラーである丹羽、ジョンヤが持っていない部分であるから。センターラインの安定でチームは劇的に変わる可能性があると思わせる試合内容。

元々計算できたファビオはさておき、三浦(イグノに顔が似ている)の活躍は正直想像以上。年齢やサイドバックもできるマルチ性を考えればよく完全移籍で獲得できた。やべっちFCで見せたお笑いポテンシャルや、強気なライン設定、ロングフィードなどガンバサポーターに愛される要素は多く、フィットは早そう。今日を機に背番号2のユニホームの売り上げが一気に上がりそうだ。

関連記事:ガンバ大阪2017シーズンプレビュー



ガンバ大阪2017シーズンプレビュー

いよいよ明後日開催される2月7日ACLプレーオフを前に昨シーズンのブログ記事を振り返りながらシーズンをプレビュー。昨シーズンほど書いている事にブレがない年も珍しい。シーズン序盤、既に総括的な事を書いていた。

明らかに変わらないといけないのに変われる選択肢(長谷川監督の引き出し)がない。

【Jリーグ第9節】ガンバ大阪-川崎フロンターレ@吹田


【ポイント①】長谷川健太監督

要は監督批判に終始した1年だった。シーズン前の期待感が高かったゆえに失望感も大きかった。宇佐美の移籍を引き金に最終的に長谷川監督が下した決断は・・・

「あと1点を獲る」チームへの変貌を期待していたのに結果は原点回帰。

【2nd 第16節】ガンバ大阪-アルビレックス新潟@吹田

前半途中、ゴール裏から「おーい!今日のサッカーもつまらないぞー!」の野次が飛んだ。

【2nd 最終節】川崎フロンターレ-ガンバ大阪@等々力


勝てないし、つまらないという二重苦。更にシーズン途中には長谷川監督続投も発表されて「勝てない・つまらない・来年も続く」の三重苦に。リーグ戦4位という結果を考えれば続投は妥当ながら、主力選手の年齢やチームの成熟度を考えば2016年が長谷川ガンバの集大成(ラストイヤー)だったのでは……と捉えてしまう。

2017年は阿部・大森・岩下という長谷川ガンバの中核とも言える選手が抜けて嫌でも変わらなければいけない状況。4-3-1-2等のシステム変更にトライしているとも報じられているが、昨シーズン序盤で失敗したアデミウソンのポジション探しと同じような事が上記システムではポジションがないであろう泉澤や井出で起らない事を祈るばかり。

チームのサイクルを無理矢理1年延ばす感が否めない。

【2nd 第14節】浦和レッズ-ガンバ大阪@埼スタ

数年後を見据えているチームではないという事実が悲壮感を強める。当然ながら今にチームの「伸びしろ」は小さい。

【Jリーグ第14節】FC東京-ガンバ大阪@味スタ


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ファン感」直後は監督批判をやめようと思ったのだが・・・


【ポイント②】サポーターの性

期待感が低いからといって応援しないとはなれないのがサポーターの性。ある種の達観だと思うが、楽観と悲観の両刀使いになれてこそ一人前のサポーター。一喜一憂は悪ではない。今年も全力で一喜一憂して、手のひらを返したように一週間前の自分の意見を否定する。それが自分らしいサポーターとしての在り方。

サッカーは苦痛ばっかりだ。ずっと心配している。だからこそ応援する

【Jリーグ第5節】ガンバ大阪-横浜F・マリノス@吹田

ただ、その危機感や敗戦の悔しさはサポーターにとってモチベーションでもある。

【YBCルヴァンカップ決勝】ガンバ大阪-浦和レッズ@埼スタ

諦める事で先に進む。諦める事で何かを得る。

【Jリーグ第7節】ガンバ大阪-柏レイソル@吹田


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アウェイ飯」開拓は今シーズンも精力的に


【ポイント③】U-23

宮本恒靖監督の影響で俄然注目度が高まっているのはガンバ大阪U-23の存在。次期トップチームの監督であろう宮本監督の指導を受ける若手選手達はガンバ大阪の未来そのもの。昨シーズンも律や市丸、初瀬で経験させてもらったが、U-23で頑張っている選手がトップチームや世代別日本代表で活躍する姿を観れる喜びは特別なものがあった。

一方、チーム運営的には昨シーズンはトライアルイヤーという事もあり、課題が多かった事も事実。ただ、昨シーズン多々書いた期待感ゆえの苦言や提言はトップチームと完全に分ける事で改善されそうな予感。個人的にはオーバーエイジは続けて欲しかったが、オーバーエイジ当人の心境を考えれば仕方ないか。

そんな掛川からほど近いエコパスタジアムでリアルな「幻の左」が炸裂した瞬間に立ち会えた事が今節のハイライト。

【2nd 第8節】ジュビロ磐田-ガンバ大阪@エコパ

練習試合では経験できない緊張感や勝敗に真剣に向き合ってもらうために安くないお金を投資してJ3に参加してる事を今一度考えるべき。

勝敗にこだわれないならJ3に参加している意味がない

競争がないスタメンにも違和感がある。

【J3】セカンドチームの在り方が難しい件

「トップチームの試合に出るためのアピール」だけではJ3で勝てない。

【J3沖縄遠征記】誰のために戦うのか?

どういうオーバーエイジと一緒にプレーさせるかは選手達の成長に影響するだろう。(中略)セカンドチームにおいてオーバーエイジの補強という考えがあっても面白い。

オーバーエイジ補強論 ~セカンドチームの活動をより意義あるものにするために~


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J3アウェイ遠征は2016年行けなかった土地を中心に


【最後に】

何はともあれ今年もサポーターとして生活できる事に感謝。学生時代に始めたこのブログも今年で11年目で、いつの間にか自分も30代。ガンバの事を語れる相手がいない事をきっかけにブログを書き始めた事を考えれば、今の状況はかなりの前進。自分がサポーターを楽しめているのは色んな方々の好意やサポートありきである事を近年強く感じているので、今年はベテラン選手よろしく、自分が楽しむだけではなく、周りに好影響を与えられる様な行動も意識したいと思うシーズン直前なのであります。

みなさま、今シーズンもどうぞ宜しくお願いします。

サポーターの声援が心技体の「心」を支える事ができると想っている。

【天皇杯 準々決勝】横浜F・マリノス-ガンバ大阪@日産

負けたけど楽しかった。(中略)海外まで駆けつけるクレイジーなサポーター同士だからこそ得られる応援での一体感や、未知のスタジアムへの興奮等が要因だと考えている。

【ACL遠征記】メルボルン・ビクトリー-ガンバ大阪@AAMI Park


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ACLアウェイ遠征は今シーズンも最大の楽しみ

関連記事:コアサポーターはJリーグを楽しめないのか?




【書評/読書感想】「サッカーおくのほそ道」(宇都宮徹壱)

一言で表現するのであれば「サッカーに対する考え方の多様性」を紹介した本。企業、選手、スポンサー、サポーター、スタッフ、監督・・・あらゆる立場の目線から“我がクラブ”を愛し、愛するゆえに苦悩し、もがく様を第三者の目線で書かれてある。サッカーはピッチ外の戦いも熱い。ノンフィクションでありながら、ドラマ性も高いので本の世界に没頭して一気に読み終えた。宇都宮さん著なので、もちろん取材対象はアンダーカテゴリー。初見の情報が多いのも魅力。


マスコットにも詳しい事で有名なライター・写真家 宇都宮徹壱さん(写真右)

印象深いのは東京武蔵野シティFCを紹介する章に書かれてある宇都宮さんの想い。宇都宮さんの地元クラブである東京武蔵野シティFCに対してJリーグクラブになるより、ビッグクラブになるより、身近に寄り添う存在であり続ける事を望んでいる・・・これは一冊を通じて一番伝えたいメッセージだったと推測する。ホンダロックSCのサポーターで「今そこにあるサッカーを愛せ!」と唄い続けるロック総統、奈良クラブで奈良劇場総支配人をエンジョイする岡山一成、ブリオベッカ浦安でクラブとしてはJリーグを目指せない中でも世界に羽ばたく選手を育てる事に熱い想いを持つ都並敏史・・・皆、Jリーグを目指すクラブ関係者よりイキイキと描かれていると感じたのは気のせいではないはず。

各章の最期には【付記】という形でクラブの“その後”が簡潔に紹介されているのだが、現実は甘くない事を教えさせられる。何かを犠牲にして、リスクを冒して上を目指すだけが選択肢ではないという価値観。それは決してネガティブな事ではないという考え方がこの本を通じて日本のサッカーファンに広がれば素敵だ。

関連記事①:【書評/読書感想】「フットボール百景」(宇都宮徹壱)
関連記事②:『J番記者による大忘年会2016』に参加してきた話